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    タコの忍法

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    もともと夜行性のタコは、昼間は岩陰や岩と砂地の隙間に隠れていることが多く見つけにくいですが、夏の繁殖期には、昼間もあちらこちらで見かけることができます。

    海の生き物(イルカなど哺乳動物を除く)の中で、もっとも賢いといわれるのがタコです。なにしろ目が良く運動能力も抜群で、特に柔軟体操をやらせたらオリンピック選手でも敵いません。体が柔らかいので、「どうしてこんな狭いところ通るの!」といった脱出術もお手のものです。そして手先も器用で、護身術も多芸多才です。

    その代表的な忍法は、変わり身の術です。

    岩や砂などまわりの環境にあわせて体色が変わります。まわりの色と同じにしてカムフラージュするわけですね。タコ以外にもカレイやヒラメが体色を変えることが有名ですが、イカやタコは、その中でも激しく急変させることが出来ます。人は怒った時、顔色が赤くなり、「ゆでダコ」みたいと言います。人は顔色を変えても体色を変えることはできません。魚屋さんやスーパーで並んでいるお刺身用のタコは、ほとんど薄いピンク色の「ゆでダコ」です。海中では、タコが怒ると青白く体色を変化させます。決して「ゆでダコ」の色ではありません。

    それではなぜ、怒ったり(威嚇)まわりの色にカムフラージュするために体色を急変することができるのでしょうか?不思議ですよね!

    体色のもとになるのは、皮膚に内蔵された色素胞(袋)と光を反射する細胞です。色素胞には、黒・黄色・赤・白などの色素があり、これらが収縮したり拡張したりすることで、体色に変化がおきます。体色を急変させることができる一部の魚やタコは、体色神経というものがあって、目で感じた背景の色をこの体色神経で色素胞に伝え、同じ色に体色を変化させます。見事なシステムです。最近の画像処理ソフトのカラー選択(カラーピッカー)のスポイトの機能が、タコたちの体色変化システムに似ています。陸上の生物でも体色を変化させるものがあるようですが、タコのように、背景と同じ色に瞬間的に体色を変化させることができるのはないのでは?と思います。

    次は、煙頓の術です。

    ご存じですよね。イカやタコは墨を吐きます。外敵に捕まりそうになると、墨を吐き、目を眩ませて逃げるのです。以前、台湾でナイトダイビング中、大きなイカ(タコではありません。)に墨を吐かれて、2~3分くらい何も見えなかったことがあります。タコは常に身体の中に黒い墨を貯蔵しておき、いざという時に使います。私たち人間よりも危機管理能力に優れていますよね。

    そして、木の葉隠れの術です。

    タコは足についている吸盤の見事な機能で、海草を身体に巻き、隠れることができます。見事なまでに身体全体を海草でくるむことができるのです。その他にも、砂の中に潜って隠れたり(潜望鏡のように目を砂から出しています。)、威嚇のために、体色を変える他、足を大きく広げ、足と足のひだで扇子のようにする時もあります。(大きく見せて相手をビックリさせます。)泳がなくても(タコは泳ぎもうまいのです。)足の吸盤で岩をよじ登ったら張り付いたりすることもできます。

    こんな多才な術を使う賢いタコですが、好物の貝の食べた後の貝殻を、自分の巣の入り口においておき、タコがいること、すぐ分かってしまうのは、あまりにもまぬけで、憎めません!

    タコ、食べても美味しいですね!大好きです。護身術が多芸多才なタコ、どこでもいつでも、スーパーの鮮魚コーナーに並んでいますね。タコの生態を理解している漁師さんたちがもっと賢いのでしょうか?

    -お生物講座003-