« イカの親は子供に愛情いっぱい! | トップ | 空飛ぶトビウオはサンマの仲間? »
痛い!美味しい!クラゲのお話
夏の終わりのクラゲのシーズンにはまだまだですが、南の暖かい海などで見ることができるいろいろな種類のクラゲ、そして、中国料理の前菜に出てくるクラゲのお話です。
クラゲというと海で泳いでいる私たちを刺す恐いイメージと、クラゲ料理の美味しさを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? 皆さんのクラゲに対するイメージは、どちらです?『痛い!』?それとも『美味しい』? 松とうちゃんは、どっちもです。クラゲの毒にはとっても敏感ですし、クラゲに対する恐怖感もありますが、クラゲ料理も大好きです。 クラゲのほとんどは、本体部分から伸びた触手を持ち、こちらには、刺胞という小さな毒のカプセルを発射する機能があります。 触手で、動物プランクトンや稚魚などの獲物を射止めたり、巻き付きそれらを食べます。クラゲのほとんどは肉食というから、驚きです。 どのような構造になっているのでしょうか? 見た目では、白っぽく透明のような感じですが、ちゃんと消化器官があります。本体の触手に取り囲まれた中央には、口があり、そこから内部の消化器へ獲物を取り込みます。甲殻類などの消化できない殻は再び口から吐き出されます。なんとクラゲの口は肛門と兼用なのです! クラゲのほとんどは、海中に漂っているかのように見えますが、結構すばやく泳ぐのです。円盤状の傘のように見えるクラゲは、傘口から海水を勢いよく噴射して泳ぎます。その時の様子は、クラゲの傘が膨らんだり扁平したりしますのでよく分かりますよね! さてクラゲはいろいろな種類がありますが、幾つかのクラゲの特徴をお話しましょう! 別名『電気クラゲ』と呼ばれるカツオノエボシは、たくさんの触手が数m以上に伸びていることがあり、形のハッキリしないものです。裸で泳いでいる人がこれにやられると強いショックを受け、時には溺死することもある恐いクラゲです。 松とうちゃんも約20年前、伊豆半島の松崎近くの海水浴でやられ、水深5mくらいのところで下半身が麻痺し、泳げなくなり、危うく溺死するあぶない経験があります。 やや深い箱形の傘を持つ、立方クラゲ類と言われるものは、傘の縁に4本(群)の長い触手を持ち刺胞毒が強いものが多いです。悪名高いのが、オーストラリアのサーファーや海水浴客に『海のスズメバチ』と呼ばれ恐がれているクラゲがありますが、沖縄でも『ハブクラゲ』と呼ばれる強い毒を持つものがあります。 北海道から沖縄まで日本沿岸で広く分布し、ごく普通に見られるのがアンドンクラゲで夏の終わりに海水浴場に多く発生します。皆さんが怖がっているのはほとんどこのクラゲで、傘本体は3~5cmと小さいですが、4本の触手が長く伸びていて、ほとんど無色透明ですので、その姿に気がつく前にやられてしまうことが多いのです。また、このアンドンクラゲは泳ぎが時速300~400mと比較的速いことでも知られています。 もともと、アンドンクラゲの長い触手は、我々人間を襲うためのものではありませんが、動物プランクトンや稚魚を捕らえる大切な道具なのです。これらにやられると鞭(むち)で打たれたようなみみずばれになり、かなり痛いですよね! 松とうちゃんは、海で多くのダイバーを案内する機会が多く、大概、先頭を後ろむきで水面を泳ぎます。その時首筋をやられるのでたまりません! クラゲに直接肌を刺された場合は、こすらずに、なるべく早くに水道水で洗い流してから『食用酢』などを数回かけるのがいいです。酢をかけた時はちょっと痛みますが、治りはかなり早いです。念のために、その後『抗ヒスタミン剤』『副腎皮質ホルモン剤』を薄く塗るのも、いいと思います。これらは予め、お医者さんから本人用にいただいたものを使用しましょう!他の方からいただくのは止めましょうね! ちょっと横道にそれましたので話を戻しまして、次にクラゲとは思えないアサガオクラゲです。 アサガオクラゲは、北海道から四国まで広く分布しているクラゲで、海藻やスガモなどにぶら下がるように付着しアサガオが咲いたような形をしています。やはり触手で小動物を捕らえて食べているのですが、その移動の仕方がユニークです。触手ようの先の丸い突起が強い粘着性で、少しづつ隣のほうにその突起をペタリとくっつけ、まるでシャクトリムシがはうように移動するのです。面白い動きです。 典型的なクラゲの形をしているミズクラゲは、もっとも馴染みの多いものではないでしょうか?丸みをおびた円盤状の傘の周囲に触手を持ち、中央にはリボンのような口腕が垂れ下がっています。よく海面にぷかぷか浮いている白っぽいのがこのクラゲで、異常発生で発電所などの冷却取水口を詰まらせたり、定置網などに大きな被害をもたらすこともあります。 松とうちゃんも、取水口に集まるミズクラゲの予防工事の潜水作業に従事したことがあります。あまり気持ちのいいものではなかった記憶があります。 ミズクラゲの仲間で、傘に赤い筋の入ったアカクラゲや、長い4本の口腕が美しいヤナギクラゲなど水中写真の被写体としても人気の高いクラゲもいます。 癒し系として水族館や水槽で飼われることが多くなったクラゲですが、水中でのその動きや美しさが、人の心をいやすのに役立つのでしょうね!確かに、海中でクラゲの動きを見ていて、美しいと感じることがあります。 クラゲは漢字で『水母』とか『海月』と書きます。松とうちゃんは、その名前からは、ロマンさえ感じられます。 最後は大型種のエチゼンクラゲです。日本海、九州、朝鮮半島に生息する大型で、傘が円盤状で、一般に寒天質が厚く硬いのが特徴です。 触手はなく吸口と呼ばれる小さな穴から小型の動物プランクトンなどを吸い込み食べ物を摂取します。仲間にはタコを連想するタコクラゲがありますが、水族館ではお馴染みではないでしょうか? パラオの塩水湖にすむタコクラゲは、夜の間湖底近くの栄養塩類を摂取し、昼は水面を泳ぎ光合成量を増加させていると言われています。 大型で肉厚のエチゼンクラゲは食用とされ、お馴染みの中国料理の食材となります。原形のまま干した食用のクラゲを日本で見かけることは少ないですが、松とうちゃんの台湾駐在中、市場ではよく見かけました。直径50~60cmのぶ厚いクラゲが並んでいました。 クラゲ料理は、てんぐさから作る寒天同様、ヘルシーでその食感がたまりませんよね!松とうちゃんは大好きです。ところで、日本料理ではクラゲ料理はないのでしょうか?この生物講座を書きながら、ふと疑問がわいてきました。 海でその美しさを見て楽しみ、食べてよし、のクラゲのお話でした。 (刺されなければ…いいのにね!) -お生物講座033- |