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美味しいホヤはアナハゼの代理母?
東北生まれの松とうちゃんは三陸名産の『ホヤ』のお刺身や酢の物が大好きです!いつも大好きなものばっかりですいませ~ん!
『ホヤ』は初夏の頃が旬(しゅん)で俳諧では夏の季語とされていますが、松とうちゃんはなぜか冬のイメージがあります。調べてみると古くは冬の季語ともされていたようで、まんざら的はずれのイメージでもないかも知れません。 『ホヤ』と言うとくせのある味で苦手!と言う方も多いと思いますが、慣れるとその食感や美味しさにはまってしまいます。お刺身や酢の物の他、塩辛や薫製(くんせい)、最近では焼き物やグラタンなど、料理法が工夫されています。 脊索動物門の『ホヤ網』の『マホヤ科』に属し食用とされているのは、『マボヤ』や『アカボヤ』です。『マボヤ』は単に『ホヤ』と呼ばれていますが、津軽海峡、陸奥湾を含む日本海全域沿岸、そして三陸海岸以南に広く分布します。 『ホヤ網』は食用の『ホヤ』ばかりではなく、世界に2300種以上の種類がありいろいろな形があります。『え、これもホヤの仲間?』と言うものもたくさんあります。 名前で面白い?美味しそうなものが、『マンジュウ(饅頭)ボヤ』、利尻島以南に分布し、直径20cmで赤橙色に見え饅頭の形をしています。『イチゴ(苺)ボヤ』、奄美諸島以南で見られ、2cmくらいのきれいなオレンジ色をした半球形のものです。『コモチ(子持ち)ボヤ』、亜寒帯海域に分布し、群体が枝分かれし多数見られることからか、子持ちボヤと呼ばれています。 その他伊豆や日本全域の沿岸で見られ青っぽく透明な群体できれいな『クロスジツツボヤ』や白に青点が多数の『チャツボボヤ』、クラゲと見間違える浮遊性の『オオサルバ』、発光しやはり浮遊性の『ヒカリボヤ』など多種多様です。 我々ダイバーが潜っている海域で、ほとんど『ホヤの仲間たち』を見ることができます!食用にする『マボヤ』は、なかなか温暖海域では見れませんが… 『マボヤ』は、地雷のような突起をもち、硬めの被のうで覆われていますが、中には消化管を含む筋膜体があります。普通、この筋膜体を食べますが、九州地方ではハルトボヤなどの被のうを味噌漬けにして薄切りを祝膳に供する習慣があるそうです。 海中での様子は体を直立させ被のうの根状突起を岩など他物にしっかりと付着させています。お魚屋さんでホヤをみると、根っこのようなものがありますよね。その根が岩などに付いているのです。 天然の『マボヤ』の採取は、小さな船の上から先端に鉤(かぎ)のついた7~10mの長い棒を使って海中を覗かずに行います。海底までおろした棒を船の上からツンツンと突っつき移動しながら『マボヤ』を探します。 漁師さんは独特の感触を覚えており『マボヤ』に当たったと感じたら、岩などに付着している根もとに鉤を引っかけ、海面に引き上げます。熟練を要するはなれ技です。この天然ホヤ漁を出来る漁師さんは、数少ないと聞いたことがあります。 やはり、『ホヤ』は、養殖より天然ものが身が多く美味しいです! 『ホヤ』には、入水孔と出水孔の2つの孔があり、入水孔で水と共に餌のプランクトンを取り込みます。雌雄同体ですが、自家受精をしません。無性生殖によって群体が形成されるのです。 『マボヤ』は放卵・放精が11月の午前中に起こる朝型、12~4月の昼に起こる昼型、10~11月の夕方に起こる夕刻型の3タイプがあります。生息する海域によって異なるようです。 さて『ホヤ』を代理母として利用する不思議な生態のお魚がいますので紹介します。『クダヤガラ』と『アナハゼ』です。『クダヤガラ』は、ホヤの表面の出水孔付近直上に卵を生みそれを口で加えて出水孔に体を突っ込み、産み立ての卵をホヤの体に中に置きます。 一方『アナハゼ』は、産卵管を直接、ホヤの出水孔に差し込んで産卵します。ホヤは、刺激すると入水孔・出水孔を閉じますが、『クダヤガラ』と『アナハゼ』の産卵の時ばかりは、両孔を閉じないで代理母を買ってでるのですから不思議です。 『ホヤ』にとって代理母は何の得になるのか分かりませんが、自然は、食物連鎖以外の不思議な営みや助け合いがあるようですね! 松とうちゃんの好物の海中生物やお魚を観察し調べていくとどんどん不思議なことや面白いことが発見され、楽しくなります。 最後に、『ホヤ』は英語で『a sea squirt』、直訳すると『海のほとばしり』の意味だそうです。海の様子ほとばしりました? -お生物講座039- |