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    ハマグリは碁石の母、蜃気楼の名付け親?

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    先日、行きつけの寿司屋さんのカウンターで、幸せそうなカップルが、『ハマグリ4個焼いてくれる?』と注文すると、板さんが『高いけど、4個もいいのかい?』と心配しながら焼いていました。

    出された焼きハマグリを見て、『すごい!こんなに大きいの?』そのカップルが喜んで言うとすかさず板さんは『これでも小さい方だよ!昔はもっと大きかったんだよ!』

    そんな会話を聞いていたら、『ハマグリ』について紹介したくなり、今回のテーマとなりました。

    『ハマグリ』は、皆さんご存知、海岸の屋台や浜食堂でよく焼きものなどとして売られている二枚貝ですね。

    『ハマグリ』の貝殻は、上等な碁石の白石の材料になっていました。それだけ、貝殻は厚く、そして堅く大きかったのです。最上の材料となっていたのは、チョウセンハマグリですが、今ではそのチョウセンハマグリも少なくメキシコハマグリにとって代わられたようです。

    『ハマグリ』は『マルスダレガイ科』に属し、北海道南部以南の日本全土の沿岸に分布し淡水のまじる湾内干潟にすんでいますが、沿岸の都市化による干潟の減少や環境汚染で、現在では生息地が大幅に減少してしまいました。

    25年前ごろには年間1万トンもの水揚げあり、庶民の友として食卓に普通に並んでいたようですが、今では『希種』な存在です。

    『ハマグリ』は、殻長8cm、殻高6cm、殻幅4cmぐらいまで成長し、形は亜三角形で丸みがあります。以前にも紹介しましたが、殻長・殻高・殻幅、どこの長さかおわかりになりますか?

    2枚貝の場合、2枚の殻の付け根とも言うべき蝶番歯の連結部分の靱帯(じんたい)を下にして上下方向を高さ、2枚の殻の厚さを幅と、表現します。つまり、片方の殻を底にして反対側の殻を直角に大きく開いた状態を想像して、その時の高さを殻高と呼ぶのです。

    殻表は光沢の強い殻皮に覆われ、色彩や模様は変化に富みます。平安時代に行われた遊び『かいあわせ(貝合せ)』に、ハマグリの貝殻を使っていたのは、いろんな模様があって奇麗だったからでしょうね!ちなみに『ハマグリ』は隠語で女性を、『かいあわせ』は、女性の同性愛を意味するそうです!

    松とうちゃんが、幼いころは、『ハマグリ』の貝殻に飴などを入れたお菓子が駄菓子屋さんでよく売っていました。

    貝殻を合わせると毛抜きの代わりになって便利ですよ!おっと!どんどん脱線していきましたので、この辺で『ハマグリ』の産卵と成長と、不思議な生態をちょっと紹介しましょう!

    体外受精をし産卵期は6~10月、卵の直径は60マイクロメートルと小さく、殻長2cmくらいになるのに約1年かかります。寿命は7~8年くらいですが、大きな『ハマグリ』に成長するには何年もかかるのです。

    呼吸や食事のため入水管と出水管で水の出し入れをしています。

    『ハマグリで海をかえる』という言葉があります。ハマグリの貝殻で海の水を汲み出し、海の水をかえると言う意味で、いくら努力しても無駄なことのたとえです!

    『ハマグリ』も『アサリ』も同じ淡水が流れ込む湾内干潟にすんでいますが、なぜ『ハマグリ』だけが、激減したのでしょうか?

    『ハマグリ』は『アサリ』より環境汚染に敏感で、環境が大きく変化すると新しい良い環境を求めて大移動をします。二枚貝の『ハマグリ』がどのようにして大移動するのでしょうか?

    まず、環境が激変したなと感じると(ハマグリが…)多量の粘液を出し、それが1~3mの長さの紐(ひも)状になり、その紐が抵抗板として働き、落潮流に引かれいっきに長距離を移動(流れに乗って)すると言う特殊な能力を持っているのです。

    皆さんご存知と思いますが、光の異常屈折現象で、砂漠で遠くにオアシスが見えるような『蜃気楼(しんきろう)』は、その昔、蜃(大はまぐりのこと)が気を吐いて楼閣を描くと考えて名づけられたものなのです!先ほどの『ハマグリ』の出す粘液の紐が、蜃気楼の名付け親だったのです!どうです?ビックリでしょう!

    漢字で書くと『蛤(浜栗)』、英名はclamshell 、クラムチャウダーで有名な『ハマグリ』が庶民の友から手の届かない伝説の貝になってしまわないかと松とうちゃん、ちょっと心配になりました!

    -お生物講座075-